2007年7月27日金曜日

fafa2007 企画にあたって(趣意書)

「福岡アートフェア・シミュレーション アルファ」企画趣旨

<大規模展覧会の氾濫>
1990年代より、大規模国際美術展が世界各地で開催されるようになった。
これにより各都市の知名度およびイメージアップ、地域文化への貢献、観光客誘致などのプラス面も見られるが、いっぽうでアーティストが「サーキット巡り」を余儀なくされ、自身が創る意志を持つ前に数年先まで予定が詰まってしまうという現象や、世界のどのアートイベントも同じような作家陣、作品を見るという事態に陥っている。
アーティストの消耗は激しく、経済的に苦しい状況は打開されないまま作品制作の自由度が奪われていっているという現状である。

<福岡の特徴>
福岡では、世界に先駆けた「福岡アジア美術トリエンナーレ」が1999年から開催されている(前身である福岡アジア美術展は1980年代から実施)。
後発の各地でのアートイベントに比べ、質が高く、先駆的であるにもかかわらず、規模が拡大されてゆかず対外的にも地元にも知名度がいま一つ上がらない。
また、福岡周辺は、公立美術館だけでなく民間のアートスペースの活動が活発であり、これは全国的に見ても地方都市では稀な現象である。
各スペースはアーティストの要望に沿った、自由度の高い企画を精力的に実施しているが、おおむね経済基盤が脆弱であり、少数の個人的な犠牲の上に成り立っているケースが多い。

<アートフェアの提案>
福岡アジア美術トリエンナーレなど福岡に既にあるイベントをグレードアップさせ、アーティストやアートスペース運営者など、いわゆる「アートの現場」に居るひとたちにとって、やりがいがあるイベントが開催できないだろうか。

将来的に大規模なアートフェスティバルへ拡大することを念頭におきながら、まずはアートスペース相互の連携をつくり、企画や制作の自由さを失わず、かつ経済的な流れを作り出すこと。

そのために、アートスペースそれぞれが自らのスペースを紹介しつつ、推薦作家を披露する、いわゆる「アートフェア」の開催を提案するものである。

<大規模イベントの必要性>
大規模イベントはもう氾濫しているにもかかわらず、なぜまたアートフェスなのか。

民間非営利組織「ミュージアム・シティ・プロジェクト」は1990年から2年おきに(ビエンナーレ形式)で都市のなかに現代美術を展開する「ミュージアム・シティ・天神」という企画をおこなってきた。
先駆的な国際美術展として評価されたが2000年まで、計6回開催され、いったん終了した。
そののちMCPは、アートセンター構想を軸に、アートを街にいかすプロジェクトとして、「天神芸術学校(アートスクール)」「アートバス」「冷泉藝館(期間限定アートセンター)」などを行ってきた。
これらにより、一定の成果は上がっているものの、大規模なフェスティバルイベントでないため、スタッフのスキルアップやシステムの問題解決、ヴァージョンアップが進まないという事態に陥っている。

<目指すのは規模そのものではなく、新たな表現を生み出す素地づくり>
単に経済的に大規模な企画を実施するという意味ではなく、アートに関わる様々な立場の人間、そして何より作り手と観客が楽しんで関わることができるイベントであることが肝要である。

このイベントの最終目的は、大規模イベントで経済力を招き入れることではなく、新しい出会いやシステムの形成により、ほかでは見たことがない、福岡独自の芸術表現が生み出されることにある。

若い世代が自分たちの未来や、芸術の可能性についてポジティブなイメージを描いてゆけること。
表現することに自信を持ち、広い世界とつながってゆくこと。
ある年齢になったら芸術をあきらめることがないよう、あらゆる世代/性別の作家が作品制作に挑戦でき、観客がそれを享受できること。
世界のスタンダードを身近に感じること。

いずれはジャンルを超えた拡がりになってゆくことも想定しつつ、まずは、地元・アート・民間スペース・自主企画実施者という点をキーワードに繋がりを創ってゆくことが、今回の目的である。

文責 宮本初音
(2007/1月原文作成、7月修正)

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